清酒「分福」「男一心」醸造元・分福酒造株式会社

酒類の分類と並行複発酵

酒類の分類

お酒は製造法により、次の3つに大別され、醸造酒は発酵方法によりさらに3つに大別されます。

醸造酒

     
  • 単発酵酒(ワイン)
  • 単行複発酵酒(ビール)
  • 並行複発酵酒(日本酒)
  • 蒸留酒 (焼酎、ウィスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、ジンなど)
  • 混成酒 (梅酒、リキュール、べルモット、ペパーミント)

米、麦、ぶどうなどの原料を発酵させてつくる酒が醸造酒。
一方、原料を発酵させた後、蒸留してつくるのが蒸留酒。
醸造酒や蒸留酒に香料や糖を加えてつくるのが混成酒です。

同じ醸造酒でも、ワインなどの果実酒は、原料そのものに糖分が含まれているので、酵母を加えるだけで発酵させることができます(単発酵)。
ところが、日本酒やビールの原料は、米や麦といったデンプンなので、日本酒では麹(こうじ)の、ビールでは麦芽の酵素の働きにより糖分に変えてから酵母によって発酵させなければなりません。ビールは、デンプンを糖分に変える工程と、その糖分を発酵させる工程を別々に行います(単行複発酵)が、日本酒は、この工程を同時に進行させます。
それが「並行複発酵」と呼ばれる醸造法で、世界に類を見ない高度な発酵技術と言われ、日本酒が持つ、まろやかな深い味わいをつくりだす秘密がこの発酵法にあります。

<参考資料@>原料や糖化酵素の供給源による分類

原料 醸造酒 蒸留酒
ブドウ ワイン ブランデー
リンゴ シードル  
清酒 米焼酎、泡盛
麦(麦芽) ビール 麦焼酎、ウイスキー
甘藷   いも焼酎
穀類、とうもろこし   ウォッカ、(バーボンウイスキー)
穀類、ジュニパー・ベリー   ジン
サトウキビ   ラム
竜舌蘭   テキーラ

清酒もろみの特徴<

並行複発酵(糖化と発酵のバランス)

酵母がアルコールをつくるには、その約2倍量の糖分が必要です。 しかし、一度に全ての糖分が供給されても、発酵はうまく進みません。糖の濃度が高くなりすぎると、酵母が糖を消費する効率が低下するからです。実際、もろみの発酵過程では、麹の酵素(アミラー ゼ)で米のデンプンが少しずつ小出しにブドウ糖に分解され(糖化)、そのブドウ糖を酵母が利用しながらアルコールをつくっていきます(発酵)。アルコールが20%にも達するのは、こうした発酵のしくみによるものです。糖化と発酵が同時にバランスよく進むので並行複発酵と呼ばれ、これは、日本酒造りの特徴です。そして当然、日本酒の味の決定要因もこのバランスの取り方にあります。

開放発酵

タンクが開放状態であるにも関わらず安全醸造を行わせることができます。これは酒母中の多量の酵母と乳酸によって、また三段(添:仲:留=1:2:3)仕込により、倍、倍と量を増やすことで、雑菌の生育を抑制しているからです。

高濃度仕込

仕込む水の量は、酒の種類よって異なります。原料の穀類に対し、ビールは600%、ウィスキーは500%ですが、日本酒は130%と仕込みの濃度が高く、これもアルコール生産量が高い理由の ひとつです。

低温発酵

日本酒は6〜15度と、比較的低温で醸造されます。低温で発酵することによって、アルコールの酵母への作用がゆるやかになります。
もろみの発酵温度は酒類によって異ります。各酒類のおおよその発酵温度は、焼酎は25〜30度、赤ワインは20〜27度、白ワインは12〜18度、ウイスキーは25〜33度、日本のビール(下面発酵ビール)は6〜10度、イギリスやドイツに見られる上面発酵ビールは15〜20度です。

高濃度アルコールの生成

もろみの発酵終了時のアルコール分(蒸留酒は蒸留前)
日本酒 約20%
焼酎(イモ類、黒糖) 約14%
ワイン 約11%
ウイスキー 約5〜8%
ビール 約5%

酒造技術が酒質を左右する

日本酒は、米というきわめて淡泊な香味をもった原料を用い、「並行複発酵」という複雑な醸造法をとっているため、その年の米質に応じ、いろいろと制御するステップが多く、たとえ米が不作の年でも、すぐれた技術があれば通常の年と変わらぬ良質の酒を醸造することが可能です。
ワインは収穫したブドウをつぶし、果汁をそのまま発酵させた酒であるため、ブドウの出来、不出来がそのまま酒質に大きく影響するのですが、日本酒は酒造技術が品質に与える影響が大きい酒です。
したがって、技術力の高いメーカーが良い酒を造ることができるといえます。