清酒「分福」「男一心」醸造元・分福酒造株式会社

最初の定番商品について

30年前、私が家業を継ぎ営業廻りをしていた頃、一般酒販店は清酒を常温で棚に並べていました。蔵でしっかり管理し、飲み頃の状態で出荷したお酒も酒販店さんを通り、お客様が飲む頃には老香が付いてしまうことが多く、とても難儀でした。特に新酒は香味の変化が早く、フレッシュな商品を提供しても却って仇になってしまい兼ねない状況でした。

市場がそうである以上、どんな状況でも、あまり変化しないへこたれない上品質なお酒を提供しなければいけないと考え、結論として導き出したのが、蔵の冷蔵庫で香味のバランスを見ながらゆっくりと2、3年熟成させ、しっかりとボディが決まったうえで商品化することでした。やってみると、「綺麗で柔らかく、すっと入ってくるお酒だ」とお客様にも評判が良く、お蔭様で弊社主力商品へと育っていきました。



当時の主力商品「分福」 純米吟醸冷温3年貯蔵 手描きラベル
(蔵元母により1枚1枚の手描き)

純米吟醸冷温3年、吟醸冷温5年に使用する酒米は滋賀県玉栄という、山田錦と比べると硬い米ですので、溶けにくく、最高ボーメも出ません。低温でゆっくり糖化、じっくりと発酵を促し、日本酒度も+3~+5になるよう醪日数も伸ばし、後味のキレが良くなるようにしています。そんな酒造りを行い、搾り、ビン詰めした後、特に香りが老ねないよう冷蔵庫(ここでの冷蔵温度は、一度火入れしたお酒の管理であり、経験上2~3℃に設定しています)でゆっくりと寝かせ、荒々しさや角が取れ、丸みや柔らかさに変わるよう香味のバランスを整えていきます。ゆっくりと熟成し、ボディの定まったお酒ですので、他のお酒と比べると温度変化や日光着色の点、ビン内のお酒が少なくなった時などで優位性が見られます。
とは言いつつ、それは対処療法であり、酒販店さん、飲食店さんで冷蔵管理して頂けると、更に一層美味しくお召し上がり頂けるものと思います。

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